ヴィトンの財布を売った

あれは40になった頃。

ブランドものなど、まったく興味はなかったが、いい歳だし、一つぐらいもっていてもいいかもと。周りの勧めもあり、買うことに。

いつもは、入ることすらした事もない仰々しいお店に入り、長財布を買うことに。

過分なおもてなしを受け、居心地の悪さを感じつつも、少しは大人になったか、なんていい気になっていた。

これがヴィトンか。あのヴィトンか。

包装紙も、リボンも捨てられない。

特に買ったばかりの頃は、財布に傷がつかないよう、おっかなびっくり使う。

しかし、時は流れて、今はキャッシュレスの世。

大抵は、スマホやカードで事が済むようになってきた。

あのヴィトンの長財布が、ただの重くてデカい物体に見えてきてしまった。

ふとお店で、二つ折りの小さくて軽そうな財布を見かけると、買い替えの欲に襲われる。

そのたび、せっかく大枚はたいて財布買ったし！かっこいいし！と自分の心をごまかしながら生きてきた。

しかし、もうそろそろいいだろう。

年末だし、もういいや、と手放す決意をする。

だからといってゴミ箱にポイという気にはなれず。

思い立ったら、決意が揺るがぬうちに即実行！という事で、近所の、ネットで検索すると出てくるような買い取り屋さんに駆け込んでみた。

初めての体験。個室のような所に通される。

財布、包装箱、探して来たら出てきた買った当時のレシートまで出してみる。

かなり使い込まれており、小銭の跡がついてしまっている、擦れているところがあるという事で、渋い様子。

それでも、ヴィトンなので、という事で1万円の値がついた。

2、3000円程度だったら持ち帰ろうと思ったが、これならという事で即決。

1万円いただいて、すっきりお店を後にする。

当面、家にどこかでもらった小さい財布があるので、それを使うことにする。

新しい財布は、年明けにでも買おう。

はー、すっきりした。